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手軽に微小領域解析 〜ラマン分光

今年のノーベル賞が発表されてしばらく。 日本人の受賞がなかったこともあり、関連ニュースを目にすることも少なくなってきた。
さてこの投稿ではそんなノーベル賞を受賞している装置の一つ、ラマンスペクトロスコピーについて書きたい。 インド人のラマン教授がノーベル物理学賞を受賞したのは87年前。 インド本国で研究してノーベル賞を取った初めてのインド人研究者だそうな[1]。

ラマンスペクトロスコピーとは

物質に光を照射すると様々な散乱が起こることになる。 ここで散乱された光のエネルギーが同じだと弾性散乱、変わっていると非弾性散乱ということになる。 これについてはX線の投稿でちょろっと書いた。 ラマンスペクトロスコピーはそのうちの非弾性散乱を利用して物質の構造解析をするテクニックだ。
さて非弾性散乱とは言っても、散乱波はエネルギーを得ている場合と失っている場合がある。 通常物質は安定状態で存在しているので、光のエネルギーを吸収して不安定状態に移行することの方が多い。 なのでエネルギーが失われた散乱波の方が強度が強くなる。 この散乱をストークス散乱という。 普通のラマン分析はこのストークス散乱を用いている。
ストークス散乱は様々な理由でエネルギーを失った集合体なので、これを分光器にかけるとどうエネルギーを失ったのかをピークとして検出することができる。 すなわち物質内の化学構造についての情報が得られる。 その性質上エネルギー差が重要なので、単波長(単一エネルギー)のレーザーを光源として用いる。

ラマンの利点

ラマンと良く似た装置に赤外分光がある。 これらの二つの装置共に分子間の振動エネルギーを補足するものなので、ピーク位置は同じ位置になる。 赤外分光の方がお手軽な装置なのに、なぜ高価なラマンを使うかというのにはそれなりに理由がある。
まずは観測できる化学構造に違いがある。 赤外は水酸基やエーテルなどの電荷の揺らぎに敏感であり、ラマンはそうでもなくCーC結合などに敏感。 ラマン散乱が水酸基などに敏感じゃないといことは結構重要で、例えば試料中に水分が含まれている状態での実験などでバックグラウンドに邪魔されず良いデータが取れる。
またラマンはサンプル形状を比較的選ばない(平滑な試料面が露出しているのが望ましいが)。 フィルムなどは極めて測定しやすいが、繊維状の試料などでも比較的簡単に測定ができる。 柔らかいゲル状のサンプルなどの測定も可能だ。 そして何より光源がレーザーなので、ビームをかなり絞れる。 100倍くらいの対物レンズを使えばビームの焦点サイズをnm単位まで落とし込める。 数ミクロンレベルで位置センシティブなサンプルなどから良いデータを取ることができる。
またサンプルステージが比較的オープンなのも魅力。 サンプル環境に様々なアタッチメントをつけることができる。

ラマン実験をするときのTIPS

  • 比較的オープンなレーザー装置なので、目や皮膚の保護をしっかりとしてく必要がある。 装置によってはレーザー保護のセーフティーグラスが必要。 かなり視界が悪くなるので、顕微鏡と組み合わせる場合あまり嬉しくないがしょうがない。
  • 波長選択できる装置の場合は、最初にレーザー波長を装置で設定する。 また私の使っている装置のソフトだと、ソフトでも使用波長を設定する必要がある。 基本的には低波長の方が綺麗なスペクトルが観測できる。 また焦点も低波長の方が絞れるので良い。
  • 蛍光を発するサンプルの場合は波長次第でSN比が変わる。 蛍光は入射光の波長に依存しないので。 私のサンプルは785nmだと多少SN比がマシになる。 だけど弱いビームなのでスペクトル自体は綺麗ではない。 あとは蛍光はビームをしばらく当てておくと少しずつ改善される。 試料が焦げない程度のビームを30分くらい当てて見ると良いかもしれない。 しかし全体的にバックグラウンドは下がるけど、ピークに大きな変化が見られるというほどでもない。 見えないものは見えない。 蛍光よけに1000nm以上の赤外ビームや、200nmくらいの紫外ビームを備えている装置もある。
  • 測定に際して他に設定する必要があるのは、ビームエネルギーを決めるフィルター。 焦げやすい試料の場合は、強めのフィルターから少しずつビームエネルギーを上げていく。 焦げたら1450くらいの炭素ピークが出るか、ピークがブロードになるよう。 私の場合は数回測定して、スペクトル形状が変わらない中で最大のエネルギーを使っている。 焦げないならばできるだけ強い方が綺麗なスペクトルが出る。
  • ビームの焦点は初め、低倍の対物レンズを使って画面で合わせる。 それから50倍程度の倍率にあげる。 サンプルによってはこのあたりの倍率から焦点が合わせにくい。 そんな時は弱めのレーザーをサンプルに照射し、レーザーのスポットで焦点を合わせる。 低波長のレーザーの方が焦点が合わせやすい気がしているのだけどどうなのだろう。
  • 測定時間はサンプルが焦げない時間で、十分なSN比が出るまで。 試行回数は多い方が良いけど、そんなに変わらないので目的次第。 宇宙線の除去に便利なので、2回は取っておいた方が良い。 時間を伸ばせばピークが綺麗に出て、回数を増やすとスペクトルがスムーズになるのかな。

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2. X線と物質の相互作用とそれを利用した分析装置のまとめ

参考文献

[1] 「チャンドラセカール・ラマン」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org)。2017年10月18日 (水) 18:18更新版

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