繊維試料のX線散乱に関する雑記 その2

 

ほとんどは調べ物しながら適当にメモとってる感じの単なる雑記です、その2。時折間違ってるとこ修正してたりします。間違ってここにたどり着いちゃてる人は、へーん、って感じで読み流してください。

繊維ポリマーからの散乱・小角領域(SAXS)

解析前の前提として密度の差が重要

基本的に小角X線で見てるのは散乱体と周辺マトリクスの密度の違い。X線なら電子密度。

ポリマーの場合は大雑把に、非晶・結晶・空気(もしくは溶媒)になる。ポリマーが2種類以上の場合はもちろんフェイズが増える。ついでに階層構造なんかもあったりするので、2つの構造サイズの境界領域なんかでは更に散乱パターンが曖昧になり解析が複雑になる。

それはともかくとして、固体の場合はtwo-phaseにシステムを仮定して解析することが多いのだけど、空気の入ってるポアがあることは多いのでそう簡単にtwo-phaseじゃないことがほとんど。
妥協として各サイズ領域(散乱ベクトル、Q-range)において条件付きtwo-phaseって感じで解析してくことになるのかな。繊維の結晶やエレメンタリーフィブリルサイズに比べれば、一般的にポアサイズの方がでかめで散乱が被らないことが多いし。

コンポジットのサンプルとかで複数の構造体が絡んでいるような場合(固体で既に3-phaseなシステム)はご愁傷さま。よっぽどラッキーな場合以外は、解釈に苦しんだ上でレビューアにいじめられることになる。

さて普通のポリマー繊維に話を戻すと、便利とも言えるし厄介だとも言えるのが空気部分の溶媒置換。これで各フェイズの散乱強度比を変えられるので、内部構造の推定が容易になる。

カーボンなんかではグリセロールなんかがよく使われるし、普通のファイバー試料では水や希薄塩溶液などが良く使われる。新しく実験計画を組む場合は、まず入れといた方が無難な実験。

ただ、溶媒の浸潤で構造が変わるって可能性はもちろんあるし、すべてのポアが溶媒にアクセシブルかどうかも条件次第だし、解析にはやはり注意が必要。

それから結晶と非晶の構造が見えるかどうかは、素材次第。非晶と結晶の密度差が近いようなサンプルは散乱強度が弱くなるし、非晶と結晶のサイズが近しい場合は散乱強度が強くなったりする。

元々回折が見えてない場合は解析できないのか? というとそういうこともなくて、この場合は結晶と非晶の密度差を上げる処理をしてあげれば良い。よく使われるのは非晶を選択的加水分解する、非晶を溶媒和させる、結晶もしくは非晶を重水素化して中性子でデータを取る……などなど。

まあどの相を見ようにも、散乱密度差を見てるってのが重要ってことでしょう。

パウダーでの実験と解析

いろんな汎用的な式ってパウダー用にできてるから、パウダーで実験しとくと楽だったりするんだよね。小角でも広角でも。サンプルの厚さやコンディションも調整しやすいし、定量的な構造パラメータに持ってきたい時も粉末試料が一番。

まあこれも粉末化で構造が変わるってサンプルも結構あるものだし、繊維試料の場合は結晶が長いので、完全な粉末結晶っていうのは作り難い。

基本的には平均でもライン抽出でも、散乱パターンを1次元の散乱強度プロファイルになおして、その形にちょうどよい構造モデルの計算式を当てはめるってことになるのだろう。

絶対強度でデータを取ってれば、一応定量性があるってことになる。

まあ、このパターンで解析が済むなら、色々と教科書もウェブ資料も論文も整ってるから素敵。

小角の繊維図の解析

まあ繊維試料を使ってりゃそうなんだけど、ほとんどの場合は繊維散乱を扱う必要が出てくる。

何が見えるかって言うと、繊維軸方向に平行に飛ぶ散乱と、繊維軸方向に垂直に飛ぶ散乱、そしてたまに混ざっている配向性のない等方性の散乱。

繊維の何かしらの配向解析

もちろん繊維試料なので配向解析は重要。同じ原料高分子を用いてさえいれば、どのレベルにしたって配向が一番繊維の強度評価に効いてくるので。

というわけで何かしらの配向的特徴を持つ散乱、赤道のストリークなり、子午線の回折なりの強度の広がりを評価する。

赤道のストリークの場合は、適当な散乱ベクトルの位置で方位方向のプロファイルを作って方位角での強度分布をHermans Parameterにでも直す。小角用の式も幾つかあるので、そういうのを使っても良い。

ポアやフィブリル自身に配向分布が余りない場合は、どの散乱ベクトルで評価しても配向パラメータはさほど変わらず。むしろこの場合は散乱の広がりは長さ方向のサイズに影響されるってことになるのか。

綺麗に配向分布している場合は扇形のように回折が広がる。この場合は散乱ベクトルの切り取り次第で算出される配向度が変わってしまうので、1次元で強度トップになるような散乱ベクトルで配向評価をするのが良いか。小角だとその見積もりも楽ではないが。

ついでにこれも他の構成フェイズの影響を受けるような構造の場合、そもそもそっちのフェイズからの影響を見てるって可能性も出てくる。

その場合は、まあ各散乱ベクトルで全部配向度を計算して、どう変化してくかってことを追っていく必要があるんだろうな。計算自体は簡単にプログラムが書けるけど、パラメータ解釈の方は容易ではない。

子午線方向はもっと厄介。強度分布が結晶と非晶ユニットの構造サイズの影響も大きく受けるので、配向分布だけの影響を見てるわけじゃないので。そこを分けようってなってくると、構造の解析と同時に進める必要が出てくるわけで、結構大きい解析プログラムを書く必要が出てくる。

またちょっと長くなってきたので、赤道と子午線の放射方向の強度の扱いについてはまた別の投稿で。

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D

俺はオフィスメイトとは永遠に分かりあえない in Finland!

 

ネタタイトルなだけであって、シリアスな話ではない。

今大学のオフィスは予約制で私の部屋は一人定員なので、オフィスをシェアしてるオフィスメイトに会うのはかなり久しぶりだったのだ。

相変わらず飄々としてるイケメンで、ちょっと遠くだけどステップアップになるジョブオファーをもらったそうで、おめでとうございます。

ネイチャーサイエンスこそないもののその下レベルの論文連発してるし、たくさんの学生の面倒しっかりみてるし、コミュニケーション能力高いし……正直高齢ポスドクやってるのがとても不思議な人の筆頭だったわけだけど。

本人はフィンランドに残りたいらしいから、まだオファーをアクセプトはしてないようだけど。

 

さて……そんなこんなで、最近の状況になんて話していたら、いつのまにやら子供が産まれてパパになっていたそう。こっちのほうもおめでとうございます!

ってそれはともかくとして、彼の話しを聞いていると子育てってやっぱり子供の個性が強いんだなーっていう印象を受けたのだ。

まずもって起きてるときにそんなに泣かないそう。MJKよ。

かといって、必要なときには泣かずにぶーぶー言って問題があることを教えてくれる。夜泣きもほとんどせず、むしろ両親の方が気になって自分で見に行くなんて状況らしい。どこの聖人の子供だって感じだよねー。あれか、例の異世界転生してきて意識のある子供なのか?

しかし、こういうのって人種的な違いも結構あるのかなー。うちはAsianAsianだけど、彼のとこはEurope-Asianって感じのカップルなので。言われてみるとEurope系の人は割と飄々と子育てしてることが多いような気もする……いや、しかしヨーロッパで住んでれば、それなり以上に両親の援助とかもあるだろうし、またそれは別の側面もあるか。

職場復帰などを見てると、出産後の女性の回復なんかはこっちの人はだいぶ早い印象がある(アメリカもそうだったな)。赤ん坊の個性にもそれなりに影響もあるものなのだろうかねー?

日本のブログやtwitterなんかを見てると、やっぱり大変だーって話しの方が目についちゃう。自分が結構大変だったからそういう話をなんとなく追っちゃってるところもあるんだろうし、大変な人ほど情報発信してシェアしたくなるってところもあるのかな。

子供は手がかかっても可愛いものだけど、睡眠時間とか質が最初から楽ならそれはもちろんそっちのほうが良いよねー……ってことでタイトル回収をする投稿でした。

D

いやあ、秋の気配が感じられるようになってきましたねえ in Finland!

 

もうすぐ9月になるわけですが、最近めっきり涼しくなりましたよね。日差しのない日は外に出るにも、結構服を着込む必要があったり。夜にヒーターを強めないで寝ると、朝方結構寒かったり。

真夏の耐え難い暑さや蒸し暑さがない一方で、こういう短い夏というのは少しのもの寂しさも感じるもの。フィンランドの8月は後半から秋って感じで、身体に夏らしさを感じるのは7月が中心だからねえ。

9月はどんどん寒くなり、10月はどんどん暗くなり、悪名高い暗き11月(暗くて雨が降って雪はまだ降らない)がやってくるわけだけど、個人的にはこのシーズンは割と好きだったりするんだよな。
むしろどんどん日が長くなって夜が暗くならない5・6月あたりの方が、精神に蓄積するダメージが大きい気がしている。

このあたり人によって結構違うから面白い。

外国人は11月が苦手って言ってる人がやっぱり多い気がするねえ。

逆にうちのグループのネイティブフィンランド人のPhDの学生は、開けない冬、というか寒くて雪まで降ることのある4月あたりが苦手と言ってたし。

まあ何事も一長一短。良い点を楽しみ悪い点をなるべく気にしないような心持ちで生きて、バランスを取っていくのが良いのでしょうねえ。

日本の蒸し暑い残暑をもう一度体験したいとは思わないけれど、懐かしさは感じるもの。生まれ故郷だからだろうけど、日本の四季ってのはバランスが良かったなあって感じてたりする今日この頃。

さて、とめどなく綴ってしまったけれど、今日は久しぶりに職場に出勤してのお仕事。今日も1日を頑張りましょうか。

D

 

下の階の住人に床騒音を指摘していただいたお話 in Finland!

 

タイトル通り。

不満を言ってるわけじゃないのよーの枕詞から始まるA4・2枚の大作を頂いてしまった。しかし、フィンランドは管理会社経由でもなく、お手紙でご連絡ってのが一般的なのかな? あ、いや、一度尋ねたけど留守だった的なことは書いてあったけど、気づかなかったな。

さて、本題だけど、おもちゃとか足音とか、子供の床周りの騒音ってとてもうるさいよねってことで、ご不満はとてもごもっともです……ってことなのだけど。いや、フィンランドでなかろうとも、日本でもよく聞く話だよねー。

でもなんとなくフィンランドって子供の動きには甘いイメージがあったし、実際に自分に起こるとちょっと驚いてしまったりしたのだ。

もちろん子供がひどすぎる音を立てているような時は注意するんだけどさ、ずっと一緒に暮らしてると少しずつ慣れてきてしまうのが問題だよね。このくらいならいっかってのが少しずつ増えてしまうわけだけど、他の人は必ずしもそう感じないわけで。

このあたりは子供のパーソナリティーもでかいとは思うけど……この点では残念ながらうちの子はとてもノイジー、注意するとわざと暴れまわって騒音をたてるような気質もある。もちろんそれを補ってくれるいいところがたくさんあるわけだけど、そんなのはよその人には関係ないからねー。

というわけで、お知らせしてくれた下の階の住人さんを訪問して謝罪のご挨拶。ちょっと色々他のことも話したりしたけど、「騒音ごめんなさい、改良します、改善されてなかったらもう一度お知らせくださいー」と伝えて戻ってきたのだ。

あえてこちらの言い訳を上げるならば、上のフロアからの騒音、というか物音は一切聞こえないんだよね。それで、割とフロア防音が良いマンションだと思ってしまっていたってこと。

実際は上階の人がとても静かな方だったのか、もしかしたら今誰も住んでないってことが正解の模様。フィンランドってアメリカとかと比べるとなぜか玄関前とかで人にほとんど合わないから名札かかってるなら誰か住んでるとみなしてるんだけど……さすがキープディスタンスの国だ。

前のマンションに住んでた時は上の階から結構音が聞こえてきてたので、子供にももう少し細かく注意してたんだけどねえ……

子供のノイズは抑えきれないところがあるから、ちょっと難しいところもあるんだけど……子供の部屋に防音できそうなマットを敷くのと、なるべく静かにするように頑張ってもらうしかなよねえ。

まあ、だいぶ大きくなってもきたし、少しずつ向上を目指しましょう。

D

繊維試料のX線散乱に関する雑記 その1

 

ほとんどは調べ物しながらメモとっただけの単なる雑記です。時折間違ってるとこ修正してたりします。間違ってここにたどり着いちゃた人は、へーん、って感じで読み流してください。

繊維ポリマー結晶からの散乱・広角領域(WAXS)

広角領域(WAXS)に関しては、まあだいたい結晶からの回折だけ見てるので、結晶配向なり各格子面方向ごとの結晶サイズなり、バルクに対する結晶にの量なりを評価すれば良い。まあ、頑張ればそれなりに定量性のあるデータ解析になる。

繊維回折でそのまま全部評価できるけど、結晶化度はパウダー回折から算出しといた方が突っ込まれにくい。ただ、繊維試料を完全なパウダーとみなすのは難しいし、粉末回折データでリートベルトしたからって完全な定量性があるわけではないと思う。

ちなみに繊維回折でも結晶サイズが大きい場合はそれなりに原子配置の構造解析も可能。まあ、今更原子座標を得たいポリマー結晶なんてそんなにないだろうけど。

一応各種出しといた方が良い値を以下に。

結晶配向

Hermans Parameterを出すのが一般的だと思う。回折の広がりの半値幅あたりを使ったって、傾向を見るだけならさほど変わりはしないのだがね。

さて、Hermans parameterを使う時はどこの軸とどの結晶面の配向を見てるかをメソッドに書いて上げた方が優しいとは思う。大概書いてない。たとえばだけど……

Grubb and Jelinski. Macromolecules 1997, 30, 10, 2860-2867 (https://doi.org/10.1021/ma961293c)

この論文くらい丁寧にメソッドを書いといたほうが親切で良いと思う。

さて、繊維軸と結晶長軸(c軸)方向の回折で値を出すのが一般的だと思うが、子午線の(00l)面は割と回折が見えにくいことも多いので繊維軸を照射X線に傾けて強化しといた方が突っ込まれにくい。ただどっちでも値は一緒になるはず、って確か上の論文に書いてあったはず。

赤道の強い回折(hk0)から結晶のクロスセクションの方とのずれを出してもいいけど、この場合はc軸とのずれの値にする場合は変換処理が必要なので注意。残念ながらこの変換処理は完璧ではないので、c軸から直接出した場合と値はズレることが多い。

まあ結局どっからどう出したのかをメソッドに丁寧に書いておくのが重要ってことか。

結晶化度

非晶と結晶の体積分率。X線の回折強度の式を見ると、強度は単位格子の数由来になるので、定量的な結晶量の評価ができるということになる。このあたりについてはquantitative phase analysisなんてググると色々情報が出てくる。

もちろんX線強度から様々なバックグラウンド除去し、ローレンツ因子や配向因子、吸収因子などで補正する必要があり、多物質での定量をする実験では内部標準などを使う必要が出てくる。このプロセスをガチでクソ真面目にやるのは大変で、そんなことをやっている論文を見た記憶はあまりない。

……のだけど、結晶多形(allomorphs, polymorphs)が混ざったサンプルの場合は結構色々と条件をスキップできて、各結晶の回折の構造因子や単位格子体積の比から結晶量を定量化できたりする。

結晶と非晶はその一部なので、結晶化度は回折強度を適切に非晶面積と結晶面積に分けることができれば、定量化できるということになる。まあ非晶のstructure factor構造因子ってなんぞやってことになるので、やっぱり数値はいい加減になってしまうのだろうけれど。

というわけで結晶化度は面積比で出しておくと、定量的な結晶評価をしようとしてるんだよ! っていう言い訳ができる。

ただ他の伝統的な手法を使ったほうが、%としては他の実験値と合うような良い値になるんだけれどねえ。

結晶化度は真面目に出しても適当に出してもレビュー中に突っ込まれやすいので、面倒くさいから余り使いたくない値。

結晶サイズ

回折幅を利用した、有名なシェラー式で計算できる。

バックグランド減算をしっかりやるとそれっぽい値が出てくるので便利。

でも基本的に可能な最小値を出してるってことと、やっぱりだいぶプロセス由来になってしまうってところで、難しいところもある。

5nmくらいの理想結晶から回折パターンを計算して、そのプロファイルを5nmの結晶サイズになるようにフィッティングするのはそう簡単なことではない。

また回折幅は結晶サイズだけでなく、結晶の乱れ(ディスオーダ)からも増幅する。同方向の複数回折からそれぞれの寄与を評価する方法もあるんだけど、これもまたそう簡単な方法ではない。

まあ、でもどうせX線取ったなら出しといた方が良い値。この値も色々突っ込みどころはあるけれど、そう簡単に修正できるものじゃないから厳しく突っ込まれないことのほうが多い。

WAXSはこんな感じかな。まあ小さい結晶に関してはシミュレーションと組み合わせるのが常道になってる気はするけど、従来の解析に意味がないわけではない。新しいマテリアルを使ったら、このあたりは出しておくのは重要な値だと思う。

なんか少し長くなりそうなので、小角はその2に投稿を分ける。

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D

久しぶりにテーマをアップデートしたら色々と設定が消えてるなー

うーむ。

久しぶりにワードプレスのテーマにアップデートかけたら色々と設定が変わってる気がする。

ワードプレス自体がアップデートされていることもあるし、自分でphpいじっていたところを忘れてたってところもかなりありそう。

特に広告関連の設定が軒並み消えちゃってるので、とりあえず一時的に自動広告をONにしておく。

自動広告そんなに良くなかった印象があって、変なところに広告が入ったりするかもだけど……私がチェックしたのは始まった頃だったから、その頃よりはたぶん良くなってるんじゃないかなと期待はしてるんだけど。

できれば元の設定に戻していきたいとは思ってるけど、結構phpの書き換えは大変だった気がするので……まあちょっとずつだな。

しかし、やっぱり子テーマは使わないとだめだね。以前何かしら設定がうまくいかなくて本サイトでは子テーマ入れてなかったんだけど、今度こそしっかり勉強して使おう……

D

[2021年8月] wordpressでテーマのphp編集ができなくなってる件

久しぶりに使っているワードプレスのテーマのアップデートをして、ヘッダーやら何やらちょっとphpをいじる必要があった。

前回やったのがだいぶ前だったから、編集場所を探すところから始めないといけなかった。

ちなみに、編集場所は……

サイトネットワーク管理>>テーマ>>テーマエディター

だった。

致命的なエラーとその対策

さて、まずはヘッダーからいじるか……と始めようと思ったらいきなり以下のエラー文。

エラー文:

致命的なエラーをチェックするためにサイトと通信できないため、PHP の変更は取り消されました。SFTP を使うなど、他の手段で PHP ファイルの変更をアップロードする必要があります。

私の対策:

はい。大人しくSFTPでファイル編集しました。

エックスサーバー上での編集場所:

契約してるレンタルサーバーのエックスサーバーにログインして編集。

ログインしたメイン画面からファイル管理>>ファイルマネージャータブが開く

ウエブサイト名>>public_html>>wp-content>>themes>>テーマの名前

てな感じで各種phpファイルが見つかる。

直接編集もできるし書き換えのアップロードもできる。

ウェブに書いてあったけどやらなかったその他の対策:

ワードプレスのアップデート –> 既に最新

phpのアップデート –> 既に推奨バージョン

レンタルサーバー会社のWAFの問題 –> 余り知識は無いけど特にこれの問題はなさそうに見えた。

file.phpの編集  –> これでワードプレス上で編集できるようになるらしいけど、手間がftp編集するのと変わらない

 

という感じでした。まあそのうちワードプレスの方で編集できるようにアップデートされるんじゃないかな……と思うけれど、さてどうなることでしょう。

D

夏休暇も終わり残り約10ヶ月のお仕事 in Finland!

 

ほぼ息子L君の面倒を見ていただけの夏休暇も終わり、またお仕事の日々が始まった。

ここ1年のほとんどがそうであったように、家で再びリモートワークを始めるというだけのことだけど。

ちょっとリモートワーク長すぎて生産性ガタ落ちしてる気はしてるんだけど、大学のX線装置両方壊れてるし、溜まってるデータを片付ける時間に使うしかないんだよね。

正直余り楽しいと言える日々でもないけれど、せめてコロナの収束に多少は貢献しているのだろうと信じたいところだ。ま、収束どころか広がってるけどさ。

 

……まあ、良い機会だとは思ってもいる。

大学での今の契約は残すところ10ヶ月ほど。その先は今の科学関連の仕事を続ける気はなく、別の道に進もうと考えている。

正直なんとなく選んでしまい、なんとなくここまでダラダラと研究を続けてきてしまったけれど、この仕事年取って脳の劣化が始まるとちょっときついところがあるんだよね。

他の優秀な研究者に比べるまでもなく、日々の自らの仕事効率の悪さに嘆く日々。流石にこれを続けたら心が壊れる。

もちろんモチベーションさえあれば、そんなのは覆せるとは思うのだけどね。だらだら仕事として続けてるだけの私にそんなものははない。

テニス選手が肘・膝を壊したら、手術して1年を復帰に当てたり、そのまま引退してしまうように、脳が壊れた研究者は休養を取るか辞めるかしかないよね。まともな休養のシステムなんてあるのはトップ選手や教授たちってもんで、その前で壊れてしまったのならば壊れてない何かで戦える場所に移るしか無いってもんだよね。

しかし脳の不調は精神面にダメージが来るのが難しいところかな。どうしても頭が壊れたら精神も行動も不安定になりやすいものだよね。

まあそんな精神面の不調はPhDの頃から慣れたものだから、普通っぽく行動することはできるけどさ。ただ次の就活に影響がでないレベルに、この残りの10ヶ月の仕事をやってかないとなあとは思っている。

ホントはあと数年前に辞めておいて、移動しておくべきだったんだよな、とも思うけれど。ちっちゃい頃からそうだけど、見切りが下手くそなんだよなあ。ま、その辺はそういうふうに産まれてしまったのが悪いのか、そういうふうに育ってしまったのが悪いのか。それはともかくとして、パーソナリティーだからしょうがないってもんだけどね。

 

そういうわけで、このコロナ引きこもり生活を利用して、溜まりに溜まっている未発表データを片付けたいなってのが残りの10ヶ月の目標。

面倒見ている二人のPhDの学生だけはしっかりと対応するけれど、それ意外は重要な未発表データを手元に残さないってことだけを考えて進めていきたいのだ。幸いセルフファンドに近いポスドクなので、次に繋がる評価とか考えないでよければ気楽にやれるわけだけど。

立つ鳥跡を濁さず。そんな研究晩年にしたいな。

D

論文のpeer reviewのシステムってのは後どのくらい保つのかなー?

 

最近受け取った中では比較的まともな論文を査読し、ちょっと悩んだ末に結局リジェクトを付けた。アブストが面白そうだったから期待してたんだけど、内容薄すぎだしサンプルのセットもイマイチ……それでも最近査読した論文の中ではまともな方だったかなー、などと思いつつこの投稿を書いている。

いや、高齢ポスドクなのでまあそれなりの数の論文の査読をしてきたんだけどさ、最近このpeer-reviewのシステムって後どのくらい持つのかなー、って疑問を持ち始めていたりするのだ。

色々理由はあるけれど、一つずつ書いていこうと思う。

単純に大変なボランティアなこと

ご存じのようにpeer-reviewはボランティア。たとえ論文読むのに数日かかろうとも、検証するのがめちゃくちゃ大変な論文だったとしても、そこにペイは発生しない。読む価値のないデタラメ論文を投稿されていたとしても、まあ一度は読む必要はある。

科学なんぞ元々貴族の戯れであり、ペイなんか考える人がやっちゃいけないのだ……ってのは事実かもしれないけれど、私のような特に研究が好きなわけでもない職業研究者にはちょっとそのノブレスオブリージュの心は持てない。

もちろんpeer-reviewにかかる時間は職場の上司(スーパーバイザー)とかは、職務時間と考えてくれることがほとんど。日本はどうかしらんけど、たぶん大概はパーソナルディベロップメントの時間として考えてもらえるんとちゃうかな?

昔はなるべくパーソナルタイムに読もう、とかしてたけど、今ではほとんど仕事時間に突っ込んでいる。じゃなきゃとてもやってられないし。

まあそれはともかくとして、論文査読大変なんだよねえ……精神的にも時間的にも。適当な英語で書かれた適当なデータを、それなりに好意的に解釈しつつ、それでも穏便な表現でやっぱりクソって言わなきゃいけないっていう。

なんもわかんねー、ってくらいの論文が一番ラク。そんな論文あんまりないけど、なんもわかんねー場合は大概クオリティーが高いし、なんだかんだで勉強になる。もちろんクソすぎて意味わかんないって場合もあるけど、そういうのは目に見えるほころびもあるものだよね。

いやー、何にしても、普通にこんなんってペイが発生するべき仕事だよね。ってことで、そのうちボランタリーなpeer-reviewを引き受けてくれる研究者がちょっとずつ少なくなり、なくなっていくんとちゃうかなって思ってたりするんだけど他の研究者の人はどう思ってるのかな?

論文の数がめちゃくちゃ増えてること

昔って論文出すのって大変だったじゃないですか? 絵作るのも大変だし、英語校正も大変だし、刷って送ってレビューしてもらっても大変だし。

今はなんだろう。パソコン1台あれば全部できちゃう……そうXXXならね。ってことで、今は論文書いて投稿するの簡単すぎんだよね。そりゃ論文の数はぼろぼろ増えるさ、別に研究者の数が減ってたって、論文の出し先も大量にあるんだからさ。

んでしわ寄せがクルのがレビューシステムだよね。みんな論文書かないと評価されないから、よく検証されてない論文がどんどんと投稿されるわけで。

もちろん古豪のハイインパクトジャーナルは、エディターがだいたい最初にリジェクトしてくれるよ?まああの方たちのお仕事もまたえらく大変なんだろうなあと思う、実際にエディターリジェクトってるのは本人じゃないかもしれんけどさ。

でもそんな古豪ジャーナルからはそんなに若手にレビュー回ってこないし、どうでもいいのよ。2回かな……どんな経緯かはしらんけど私に回ってきたのは。

新興のジャーナルやら、IF低めのジャーナルやらから回ってくる論文がまあ曲者だったりするのさ。ほぼ素通しでレビューまでは回すジャーナルって結構あるのさ。最近だとIF10くらいあってもね。

結果として嬉しくない方の意味で大変な論文査読が、私みたいなクソ研究者にガンガン回ってきたりしてるんだろうねえ。

投稿が容易になってクオリティの低い論文が増えてること

前章の続きだけど……まあ、これが一番だよねー。

正直まともに研究してれば、よっぽど同分野の人じゃなければ、何言ってるかわかんねーけど、データ採取にも解析にもミスはないしあってるっぽい。まあ幾つかおかしいところはあるから指摘しとくか……こんくらいの理解でマイナーレビジョンになると思うんだよね。著者グループは基本的にそのフィールドをかなり良く知ってるわけでさ。

個人的にはデータを正確にとって、それをパラメタライズするところまで正確にやるってのがとても重要なことだと思っていて、その先のディスカッションは好きにやればいいさっていう主義。そこが多少おかしかったり言い過ぎたりとかってのはご愛嬌だと思うのだよね。

よっぽどフィールドがかちあった場合は色々とややこしくなるけど、まあそれはそういうものだから良いのだ。その時はすきなだけレビューアと著者で激論を交わせば良いのだよ。そういう大変さならレビューアも受けて立つものだし、そんな著者のレビューするならハッピーだよ。

だけど最近の現実としては、そのフィールドの人間じゃなくてもその前の段階で全くおかしいってわかる論文がやけに回ってくるのよ。データのとり方がおかしかったり、著者が解析のプロセスや意味を理解してなかったり。

こういうレビューはとても疲れる。何も自分に残らないし、むしろ思考に悪影響があるくらいなもの。

それで更に問題が何かって言うとさ、私レベルのクソな研究者がリジェクトって言ってる論文に「良い論文だ、マイナーレビジョン」とか言ってしまうレビューアも結構いること。

ほんとにそう思ってるのならいいんだけどさ……コメント見るとわかるけど、絶対まともに読んでないんだよなあ、ああいう人たち。パット見で真面目に読みたくない、って思ったのはわかるけどさあ。私も思ってたし。

でも、こういうので私リジェクト、他1・マイナー、他1・メジャーとかだと最終的にアクセプトに回るんだよね。だって何回も回ってくるレビジョンのレビューをリジェクトし続けるほどやる気ねーもん。

2回もエディターに「こんな直してきたんだけどどう?」って言われたら、気持ちリジェクトだけど、もうアクセプトでいいよってなるよ。ネイチャー・サイエンスのレビューしてんじゃないんだからさ。

……ってわけで、まあ既にpeer-review崩壊しはじめてるよね。

基本引き受ける前にアブストしか見れないってのも問題なんだよね。1回受けちゃうとそこから断るってのもなんだか微妙だしさ。論文みてから3日くらい断り期間もうけてくれるなら、たぶん5割の査読論文返上すると思う。まあそれはそれで査読システム崩壊するかもだけどさ。

あー、一応言っておくけど日本の研究グループはこのあたりかなりまとも、たぶん。そんなに日本人グループの論文レビューしたわけじゃないけど、幾つか読んだのはかなりしっかりしてたし普通にアクセプトされた、まあ阪大とか京大からだったからそりゃそうかって気もするが。でもどんな大学でも結局トップが1回は見てるんだから、ある程度のクオリティは担保されるはずでしょ?

新規性薄すぎてリジェクトとかディスカッションが妙に薄いとか……そんな特徴はあったりするけど、日本人グループは論文を読ませる作品としてはしっかり仕上げてくるよ。現時点では科学世界にとって良い存在だとは思うけど、だから全体の論文数やらインパクトのある論文が伸びてなかったりしちゃうのかなー、とは思ったりもするな。

いや、だって新規性のある内容ばっか飛びついて、レビューアにプルーフリーディングさせてたら、そりゃ論文数もインパクトも伸びるさ。1雑誌目で数人にレビューさせて、そのコメント利用して適当に手直しして2雑誌目へ。まあ、これで無料で労力少なく論文の質を上げられるんだよ。死ぬのは不幸なレビューアだけで、だから査読システムが崩壊するんだけどさ。

本当に低レベルな論文ほど若手にくること

これは私のやってきた印象ってだけだから間違ってる可能性も大。

まあ、結構な数の低レベルな論文見てきたわけですけど、結構真面目に見て真面目なコメントつけるわけですよ。若手なので。まあ時間かかるし大変なんだけど。

んで、最初からよくできてる論文が回ってこないのは、そういうのは大概大御所様に回ってるのかなと。

いや、もちろんそれは当然というか、理のあることだとは思うんだけど、でもこれももうちょっとバランス取った方が良いと思ってるんだよな。

大御所ならクソ論文回されても「こんな論文読む時間ない、リジェクト」で終わりにできるからさ。いや、理想的にはそういう反応も良くないのはわかるけど、そのレベルの論文ってのも結構あるものなのだよ。

昔はこの論文はジャーナルにあってない、みたいなコメントでのリジェクトが大嫌いだったけど、今ならなんとなくその理由はわかる。無理ぽっていう論文なんて一律でジャーナルにあってないくらいの理由つけてリジェクトしたいもん。

こういう論文が若手に回ってくるデメリットは色々あって、例えば若手の研究者が「なんだ論文投稿このレベルでいいのかよ……」って刷り込まれること。真面目にプルーフかけるのがアホらしくなるよね。逆に良い論文を読んだあとは、このくらい頑張らないとあかんなーってなるからね。

もちろん、それなりのレベルの論文を古豪の雑誌に投稿しても似たようなことはおこる。そんな雑誌のお抱えでレビューしてる人たちって結構凄研究者たちで、そのレベルからすれば私の論文とかも同レベルでクソなんだろうし、実際に直接”bullshit”のお言葉を頂いたこともある。いや、今思い出してもあのレビューは強烈だったな。研究者って割とイカれてるレベルでブチ切れる人いるよね。

ともかくとして、だからある程度のヒエラルキーがあること事態はしょうがないと思うのだけど、それにしても本当に拾い上げようのない論文を査読に回さざるを得ないってシステムな現状、金でも払わなきゃこのシステム持たなくなるんじゃなかろうかなあ、と思ってたりするのですよ。20−30年くらいのスパンで。

まとめ

このあたりのもろもろを考えると、まあpeer-reviewシステムはそのうち崩壊するんじゃないかなあと思っていたりする。個人的には崩壊すべきって思ってたりもするし、この美しいボランティア世界が残れるような科学コミュニティだったら良いなあとも思う……けど、実際には水は下方に流れるんとちゃうかなー。

ま、科学職業にバイバイすること決定した今だからこんなこと気楽に書けるんだけど、バイバイ決めた今だからこそ、将来的にこのフィールドがよくなっていると良いなあなんて思ってたりもするのです。自分に関係ない事の方が案外応援できるものだよね。

今苦労してるかもしれない同年代の研究者の皆さんが良い世界を作っていってくれたらと、リタイア組が応援してたりしますよー、っていう投稿でした。

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ファイザーワクチン2回目を打ってきた in Finalnd!

 

タイトル通り。

フィンランドは最初は2発目のワクチンは結構待たないといけない(3ヶ月ほど)ってスケジュールだったのだけど、ワクチン確保に余裕ができたのか、予約の前倒し変更ができるようになっている。

まだ変更されてない人は、予約サイトや電話から変更ができるはずなので、希望があればお早めに。

ヘルシンキで2発目のファイザー摂取

そういうわけで、私も予約を前倒ししてワクチンを打ってきた。

場所は以前と同じ近所のワクチン接種場所。歩いて30分くらい。

1発目のときよりもだいぶ人が少なかったな。もうみんな2発目までだいぶ打ち終わっているのか、金曜夕方にワクチンを打ちたい人が少なかったのか。

まあ余裕があるならばそれに越したことはないよね。3発目のブーストに入ってる国も結構あるみたいだし。

さて、いかにもなテントをくぐり抜けると、そこは摂取会場。KERAカードをスキャンして……

1発目の副反応はどうだったー?

筋肉痛!

2発目も同じくらいの反応でるはずやでー!

そっか、わかった!

っという簡単なやり取りをナースとしてから、ワクチンの摂取へ。

ワクチン摂取の方は相変わらず痛みの少ない注射って印象。薬液の注入がほとんどわからないくらい。

1度目のときと同じように接種後15分会場内で待機する必要があった。ワクチン接種後の予定がある人は、この15分を計算に入れとく必要があるかも。

2発目を打ち終わった人はワクチン接種証明が電子ファイルで出せるよ〜っていうお手紙をもらって、接種会場を後にしたのでした。

ファイザーワクチン2発目の後の副反応

さて、気になる副反応は……若干1発目より強めってくらい。

摂取日の夜から摂取箇所中心の筋肉痛が発生。

翌日は打った左手を持ち上げるのが大変な感じの筋肉痛だった。

1発目の時は翌々日には完治してたんだけど、2発目のときは3日目になる今日まで少しの痛みが残っている。

たぶん、明日には消えるけど、筋肉痛が少し長く残る覚悟はしていたほうが良いかもしれない。

まあ、きっと私は副反応がなかった人ってカテゴリに入るんだろうな。

(2021年8月22日追記)

嫁Xがワクチン2発目打ってきたんだけど、少し副反応が出ていた。

一発目は私のときと同じで筋肉痛だけだったんだけど、2発目は摂取翌日に微熱(平熱+1ほど)・下痢・頭痛などの症状。翌々日には完治してたけど、やはり2発目の方が副反応は出やすかったりするんだろうね。

ブースターの3発目はどうなるんだろ? 期間を置くからむしろ一発目くらいの副反応に戻るのかしら? こういう免疫系統の知識、というか生物学全般の知識がないのが残念だな。

他の多くの人のご多分に漏れず、大学の講義とかって今だったらめちゃくちゃ楽しめるんだろうなあって思う。知識欲って大学のときより全然増えてるし、若い頃って3大欲求的なものが強すぎるんだよね、きっと。

そういう意味ではなんとも社会システムと個人の成熟ってのは合わせるのが難しいものだよね。それが極端な形になってしまうと、色々と齟齬が出てきてしまうんだろうな。

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