ほとんどは調べ物しながらメモとっただけの単なる雑記です。時折間違ってるとこ修正してたりします。間違ってここにたどり着いちゃた人は、へーん、って感じで読み流してください。
繊維ポリマー結晶からの散乱・広角領域(WAXS)
広角領域(WAXS)に関しては、まあだいたい結晶からの回折だけ見てるので、結晶配向なり各格子面方向ごとの結晶サイズなり、バルクに対する結晶にの量なりを評価すれば良い。まあ、頑張ればそれなりに定量性のあるデータ解析になる。
繊維回折でそのまま全部評価できるけど、結晶化度はパウダー回折から算出しといた方が突っ込まれにくい。ただ、繊維試料を完全なパウダーとみなすのは難しいし、粉末回折データでリートベルトしたからって完全な定量性があるわけではないと思う。
ちなみに繊維回折でも結晶サイズが大きい場合はそれなりに原子配置の構造解析も可能。まあ、今更原子座標を得たいポリマー結晶なんてそんなにないだろうけど。
一応各種出しといた方が良い値を以下に。
結晶配向
Hermans Parameterを出すのが一般的だと思う。回折の広がりの半値幅あたりを使ったって、傾向を見るだけならさほど変わりはしないのだがね。
さて、Hermans parameterを使う時はどこの軸とどの結晶面の配向を見てるかをメソッドに書いて上げた方が優しいとは思う。大概書いてない。たとえばだけど……
Grubb and Jelinski. Macromolecules 1997, 30, 10, 2860-2867 (https://doi.org/10.1021/ma961293c)
この論文くらい丁寧にメソッドを書いといたほうが親切で良いと思う。
さて、繊維軸と結晶長軸(c軸)方向の回折で値を出すのが一般的だと思うが、子午線の(00l)面は割と回折が見えにくいことも多いので繊維軸を照射X線に傾けて強化しといた方が突っ込まれにくい。ただどっちでも値は一緒になるはず、って確か上の論文に書いてあったはず。
赤道の強い回折(hk0)から結晶のクロスセクションの方とのずれを出してもいいけど、この場合はc軸とのずれの値にする場合は変換処理が必要なので注意。残念ながらこの変換処理は完璧ではないので、c軸から直接出した場合と値はズレることが多い。
まあ結局どっからどう出したのかをメソッドに丁寧に書いておくのが重要ってことか。
結晶化度
非晶と結晶の体積分率。X線の回折強度の式を見ると、強度は単位格子の数由来になるので、定量的な結晶量の評価ができるということになる。このあたりについてはquantitative phase analysisなんてググると色々情報が出てくる。
もちろんX線強度から様々なバックグラウンド除去し、ローレンツ因子や配向因子、吸収因子などで補正する必要があり、多物質での定量をする実験では内部標準などを使う必要が出てくる。このプロセスをガチでクソ真面目にやるのは大変で、そんなことをやっている論文を見た記憶はあまりない。
……のだけど、結晶多形(allomorphs, polymorphs)が混ざったサンプルの場合は結構色々と条件をスキップできて、各結晶の回折の構造因子や単位格子体積の比から結晶量を定量化できたりする。
結晶と非晶はその一部なので、結晶化度は回折強度を適切に非晶面積と結晶面積に分けることができれば、定量化できるということになる。まあ非晶のstructure factor構造因子ってなんぞやってことになるので、やっぱり数値はいい加減になってしまうのだろうけれど。
というわけで結晶化度は面積比で出しておくと、定量的な結晶評価をしようとしてるんだよ! っていう言い訳ができる。
ただ他の伝統的な手法を使ったほうが、%としては他の実験値と合うような良い値になるんだけれどねえ。
結晶化度は真面目に出しても適当に出してもレビュー中に突っ込まれやすいので、面倒くさいから余り使いたくない値。
結晶サイズ
回折幅を利用した、有名なシェラー式で計算できる。
バックグランド減算をしっかりやるとそれっぽい値が出てくるので便利。
でも基本的に可能な最小値を出してるってことと、やっぱりだいぶプロセス由来になってしまうってところで、難しいところもある。
5nmくらいの理想結晶から回折パターンを計算して、そのプロファイルを5nmの結晶サイズになるようにフィッティングするのはそう簡単なことではない。
また回折幅は結晶サイズだけでなく、結晶の乱れ(ディスオーダ)からも増幅する。同方向の複数回折からそれぞれの寄与を評価する方法もあるんだけど、これもまたそう簡単な方法ではない。
まあ、でもどうせX線取ったなら出しといた方が良い値。この値も色々突っ込みどころはあるけれど、そう簡単に修正できるものじゃないから厳しく突っ込まれないことのほうが多い。
WAXSはこんな感じかな。まあ小さい結晶に関してはシミュレーションと組み合わせるのが常道になってる気はするけど、従来の解析に意味がないわけではない。新しいマテリアルを使ったら、このあたりは出しておくのは重要な値だと思う。
なんか少し長くなりそうなので、小角はその2に投稿を分ける。
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